うみのて音源「うみのFADE OUT」感想

うみのての音源です。15曲入り200円。
ループで何度も聴いたけど全然飽きなかった。
ライブで聴くのとはまた違う不思議な音楽。
なんか、薄曇りの日の海っていう感じがする。
明るくもないけどでも暗さに引きずり込まれるわけでもない、生活に寄り添う感じ。
なんで、うみのての音楽が聴きたくなるんだろう、と考えたんだけど、理由の一つは、人の弱さに付け込まないからっていうのがあると思う。
少なくない音楽や文学が人の弱さに付け込んでくるけど、うみのては人の弱さにつけこもうとしない。


「世の中の素敵なとこだけに眼を向けて、だから世の中は素敵だってことにして明るく生きて行こう」という音楽も
「世の中はとても暗く残酷で辛いとこだからもう諦めよう。下手に希望を持つと辛いからいいとこはあんまり眼を向けないようにしよう。」という音楽もあるけど、でもうみのては世の中は全然素敵なとこじゃないとわかっているのに、都合よく生きて行くために自分の内的真実を捻じ曲げるようなことをしていない。


1曲ずつ感想を書いて行こうと思います。

1 柳川下り
少し古風な雰囲気の曲。少し物哀しくなるけど穏やかな気持ちになる曲。
あと、これは全曲に共通して言えるけど、歌詞の言葉が綺麗。ライブで聴くと、あんなに衝動的な音楽なのに、歌詞は衝動を書き殴るようなことはせずに、丁寧に言葉を紡いでいるところがすごく好きだなあと思いました。
全ての歌詞に独特の世界観があります。
「船頭さん、おお船頭さん」のとこのちょっと高いピアノの音と、ピアノソロのとこがすごく好きです。


あと聴きどころと言えば、「大学の同級生の高野くんのピアノソロです!」と何故かめちゃくちゃ笹口さんがどやってるところ。


2 トキオ東京25時
最初1、2,3,4のカウントから曲に入るんですけど、そのカウントの掛け声がすごく、学校の体育の時間の準備体操の掛け声を彷彿します。
曲は、夜、観劇帰りに週末の明るい街を一人駅に向かって歩いた時のことを思い出します。

あの子とぼとぼ歩いてた あの子ぼとぼと歩いてた

っていうフレーズが好きです。曲全体に渡っての鉄琴の音と、特に鉄琴ソロが好きです。


3 僕の家
このCDの中でもかなり好きな曲です。素朴な感じがする。
最初の「だから誰も遊びにこない」でドラムがパンっと鳴って演奏が入るとこが格好いい。
変な自意識がなくて、聴いててほっとする。


4 東京駅
僕の家からの繋ぎが格好いい。やっぱ繰り返し何度も言っちゃうけど、この曲はすごいと思う。

気楽なもんさ 誰にも知られずに
生きるってことは 死ぬってことは
自然ってやつさ これが本当の
お前らなんか不自然だ お前らなんか不自然だ

という歌詞がとても印象的。


冒頭や間奏で笹口さんが「デュクシ!バン!デュクシ!バンバンバッ!」みたいな擬音的な何かを必死に口にしていて最初聞いた時「!?」って思った。その必死さがすごい狂的だった。

あと、「ドラムの、駅員のドラムの菊井さんのソロ!はいっ」
と声を裏返しながら紹介するのがツボ。
なんで笹口さんはこのCDでメンバー紹介の時やたらメンバーの肩書(?)まで紹介したがるのだろうか…。


終盤の

お前らなんか不自然だ お前らなんか不自然だ
不自由だ 不自然だ
不自由だ 不自然だ
不自由だ 不自然だ
不自由だ 不自然だ
アイツはいつもこう言う 俺の家は東京駅


のとこの繋げ方と歌が最高に格好いい。


最後笹口さんの「最近、ボイスパーカッション練習してて…」という喋りで曲が終わるんだけど、それであの謎の「デュクシ!バン!デュクシ!バンバンバッ!」がボイスパーカッションだとわかるオチ(?)付き。
最初聞いた時「そうかあれボイスパーカッションだったのか…」とわかった瞬間ちょっと笑ってしまった。
この曲の音源切るタイミングが絶妙!あの最後の笹口さんの独白を入れたのはすごい正解だと思う…そもそもなんで音楽CDのはずなのにちょっと笑ってしまうんだろう…。


ライブで聴く東京駅も好きです。


5 Eiga(B級)

隣で君は眠そうに あくびを噛んで眼を閉じてく

っていう描写が好きです。自分が君のどういう仕草を見てるかだけ書いてあって、君と僕の関係性にはひとつも触れていないところが良いです。

あと一箇所急に少し音が大きくなるところがあって、毎回わかってるのに毎回ちょっとびくっ!っとして悔しい思いをします。


6 正常異常
イントロのギターが格好いい。
この曲も聴くとすごく戦意を煽られます。

歌詞を読むと、この曲の世界観もすごく独特…。

7 生活ファンク

生活よ 幸せな生活よ

という歌詞を全く幸せじゃなさそうに絞り出すような声で歌っているのが印象的です。
幸せな生活なんかくそくらえだなと思う。


8 Gingko Lights
Temple Bookのカバー曲。最初、曲目カードとか見ないで聴いてて、この曲が流れた時、
「ああ、どうしよう、この曲Gingko Lightsにしかどうやっても聞こえない!」と何故か焦って曲目見たら本当にGingko Lightsだった…ということがありました。

私はTemple Bookではなくnekiさんのソロで11月に聞いたことがあるのですが、ここでこの曲聴いて、やっぱり私この曲好きなんだなーすごい印象に残ってたんだなって改めて気づきました。
今もあのライブでnekiさんがGingko Lightsを歌っている姿が鮮明に思い浮かびます。

うみのてバージョンのGingko Lightsは、nekiさんバージョンとはまた少し違った憂いの色があります。
秋独特の、なんとはなく物憂げな気分になる、あの憂い。


9 例えば僕が売れなかったら

「忘れておくれ」「覚えておけよな」正反対の気持ちを同時に歌っているとこが、とても真っ直ぐに正直に聴こえました。


全然、似てないんですけど、むしろ真逆のことを歌っているんですが、対比として浜崎あゆみさんの「Duty」を思い出しました。Dutyは浜崎さんがまさにブレイクまっただ中の時の曲です。

二つの曲の想いの質感は全然違うのに、でもどこか二つの曲は似ています。
たぶん、その立場に居る人は他にもたくさん居るのに、誰もそのことを歌っていない所、なんとなくそこからは眼を逸らすっていう所を歌っているのが似ているのだと思います。
どの立場に立っても、どこへ行っても、戦おうとし続ける限りたぶんこういった気持ちからは逃れられないのでしょう。


でもこの曲は聴いていて少し寂しくて哀しくなるのに、穏やか。


「例えば僕が売れなかったら」
透明になって消えていってしまいそうな、そんな曲。


10 Sayonara Baby Blue
聴いていてほっとします。
二人が時々喋って演奏の確認しながら演奏してるんですけど、その喋りがすごく素朴で、ここでこうやって聴いてる人が居るなんて全然気づいていないような無防備さがその喋りや演奏や歌にあって。
この曲もピアノの音が好きです。

汚れちゃった私でも 死にたいなんて思わない
落ちれば落ちるほど どきどきが止まんないの
雑巾と呼ばれたって 生きるBaby Blue
命の限り落ちてやる 私Baby Blue
100万ドルのBaby Blue

って歌詞は、私がうみのてに対して感じる気持ちによく似ています。
綺麗で、優しい曲。


11 New music,New Life
この曲の歌詞も言葉が本当に綺麗。
youtubeで見たライブでの力強い歌い方も良いなと思いましたが、こういう穏やかな歌い方もまた何か伝わってくるものがあります。


12 Bokunoie
3曲目の「僕の家」のアコースティックバージョン。
こっちも好きです。
少し淡々とした雰囲気の演奏が合うなあと思いました。


13 あおいちゃん、海え行く

踊る 踊る 踊る 踊る 踊る…
踊れ 踊れ 踊れ 踊れ 踊れ…

のとこが好きです。広がって行く感じがします。


14 よいまち
「帰り道を帰る道」というフレーズが好きです。
あおいちゃん→よいまち→夏町って繋がりがいいなと思いました。
歌詞とか、曲名に繋がりがあって。
あとよいまちと夏町の対比が好きです。


15 夏町
最後の曲にやっぱりすごくぴったりだなあと思います。
ライブバージョン(たぶん)を収録してるのも雰囲気あっていいなあと思います。
近所の小さな夏祭りの終わりを思う曲。
明るくて楽しいんだけど、どこか切ない曲。

コーラスとの掛け合いとか、手拍子入ってるとこも好きです。
コーラスが結構どこももよもよっとしてたのに、最後の方の(続く 続く)の人だけやたら格好いいのにびっくりしました。

それから、ループで聴いてると、この夏町から最初の柳川下りへの繋がりがすごく良いなあと思いました。
ループしたということに気づかないです。



本当に、何度繰り返し聴いても飽きが来ないCDでした。
歌詞も、歌詞カードがなかったので、笹口騒音ハーモニカHPに置いてないのは自分で全部ワードに書き起こしたぐらいで、そうして改めて全部文字として読んでもやっぱりすごく良いなあと思いました。
丁寧に紡いだ言葉で綺麗だし、どの曲にも独特の世界観があります。
乱暴に吐き出された言葉じゃないし、余計な言葉がない。


またうみのてで新しい音源が出るのが楽しみです。