「ぼくのお父さんは東電の社員です」読了

子どもの書く文章って言うのを根本的に信用していない。
それはほとんどの場合、彼や彼女の内面を映したものではないからだ。
言葉っていうのは重量のある鈍器と似ていて、使い方を知らなければ体ごと持って行かれてしまう。第一自分が本当に心の底で思っていることを上手く言語化できるほど小学生って大人だったっけ?例え難しい単語使ってて大人びた文章書いてても私は騙されないよ。
じゃあどう解釈したかって言うと、彼らの周りの大人達が原発原発事故に対してどう思っているかを簡略化したものだと思った。彼らの周りの大人達が子ども達に何て言っているかが透けて見えた。

この本は、お父さんに東電の社員を持つ男の子の手紙が毎日小学生新聞に掲載され、その男の子の意見に対して小学生をはじめ中学生大学生大人が毎日小学生新聞に対して送った彼への手紙が掲載されています。


子どもの文章って怖いと思った。分かり合えない感じがする。本音がどこにあるか全然見えない。
節電しない人は悪だ。東北が大変な目にあってるのに平然と暮らしている関西の人は悪だ。と、比喩によってもぼかすこともしない剥き出しの正義漢。そんな言葉を発する自分に全く疑問を抱かず100%この意見が正しいと信じ切って言葉を発している。怖い。本当に怖い。「東電を嘘つきだ」と書いた後すぐに「ひまわりを植えれば放射能は薄れます。帽子やマスクをすれば放射能は防げます。節電をしましょう。節電したら原発がなくても大丈夫です。」と平然と書いてるから。
ねえねえ、あなたたちは知らないだろうけど、私達も小学生の頃何度も書かされたよ。
ーどうやったら地球温暖化は防げますか?
「節電をすることです。」
ーどうやったら節電できますか?
「電気をつけっぱなしにしないことです。」
自由に言いなさいって言われてるけど、書かなきゃいけない内容は決まってる。いつの間にかそこに合わせたものを書くんだよね。それを汲み取って書ける人が一番偉いってことだから。怖いよ。でもその連続で原発は出来たんだよ。
あなたたちが「東電は悪い。節電すべき。原発はなくすべき」と口にしたその理由と同じ理屈で原発はできたんだよ。
だって小学生でしょ?もし周りの大人が「いや原発は絶対に必要だ。東電は正しい。人が死んでしまったのはしょうがない」ってみんな言ってたら、この子達が書いた手紙はこれと180度違うものになってたと思う。
子どもは文章の中では親の思想を根本的には覆せないんだよ。例え心の中に疑念があったとしても。
発する意見は、本人のものように見えても本質的には親や先生の意見。だってそれ以外の行動規範なんてどこにもないんだから。
彼らは自分の意見を発しているつもりかもしれないけどそうじゃない。周りの大人に扇動されて、あたかもそれが自分の意見かのように自分で思い込んでいるだけだよ。
でも大人になったってその部分が変わってない人はたくさんいるでしょう。先生や大人の言うことを聞くのが良い子で、だからこそ彼らは正義漢ぶってそんな手紙書けるんでしょう?でもそれと同じ流れで原発は生まれ今日まで稼動し続けていたんだよ。
自分で物考えてそれに沿った行動したらこっぴどく殴られたり怒鳴られたり正座させられたり教室から追い出されたり職員室に呼び出されたりしたじゃない。
大人と意見が違っても押し通せる根性お前らにあんの?と私は大人げなく彼らに聞きたいよ。


でも本当に怖いと思っているのは彼らで、年少の頃の死の恐怖ってすさまじいじゃない。全てを凌駕した恐怖じゃない。そんな彼らに「目に見えない光線を浴びたら死んだり病気になる。食べ物にも含まれてたりする。しかもそれは子どもにより悪影響を及ぼす。」なんて言われたら、死ぬほど怖いよそれ。しかも何にも自分達は悪いことしてないんだよ。なのにそんな戒めを受けなきゃいけないんだよ。それって何の罰なの?悪いことしてないのに罰を受けなきゃいけないんだよ。どうして?ってなるよ。


「大変なのは東電の人ばかりではないのです。僕達は毎日勉強できる環境、毎少を購読できることに感謝して、今僕達にできることを精一杯やって、いつか日本の役に立つ大人になりましょう。」
これ2000年代の子どもが書いた文章なんだよ。もう終戦してから60年以上経っているのに、これじゃ戦時中の子どもと同じじゃない。
原発での作業員はさしずめ特攻隊員ですか?異常だよ。どこが平和だったの?原発が出来てから今まで、いつ平和だったの?
これ読んでぞっとした感覚は、鹿児島の知覧の特攻平和会館で特攻隊員の人が親類に当てて書いた手紙を読んだ時に似ていた。
戦時に書かれたの手紙読んだ感覚と同じっておかしいでしょ?異常でしょ?


そして高校の時に見学に言った川内原発。あれの一般向け原発案内を見たけど、「絶対に事故は起こりません。」ということをひたすらに見学者に訴え続ける内容で、心底気持ち悪かった。要するに
「Q放射能が流出したらどうするんですか?」
「A放射能が流出することなど絶対にありえません。」
っていうようなパネルがずーっと並んでいた。答えになってない。
第一安全ならなぜ電力の需要が最も高い東京に置かなかった?決まってるでしょ危ないからだよ。

震災直前までテレビでやっていた「核廃棄物は地中深くに埋めているので安全です」ってCMはどこ行ったの?安全なんでしょ。安全ならなぜ震災後CMをやめた?


そういうことをもし私が例えばツイッターとかブログに書いたところで何か変わっていただろうか。変わっていなかったと思う。
じゃあどうしたらよかったの?


図書館で新聞を読んだ。浜岡原発が立地する御前崎市長選で、反原発の2人の候補に現職の石原さんが勝ったらしい。http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20120416/CK2012041602000165.html?ref=rank
彼に投票した人は「原発がなくなったら仕事がなくなり生活ができなくなる」という人が多かったそうだ。
生活のための原発だったのにね。麻薬のようだと思った。


こうやって感想色々書いたけど、じゃあ私に何ができるかって、現実的には、新聞読んで論争もできるほどの知識を持った上で自分の主義主張思想を獲得することで、プロパガンダに翻弄されず賢明な判断が下せる世論の一部になることぐらいしかない。それ以上にはなれないかもしれない。でもそれ以下であってはならない。こんな月並みなことしか言えなくて残念だよ。
いい加減もう政治家にヒーロー思想持つの辞めようよ。いないんだよヒーローなんて。100%欠点のない選択なんて有り得ないんだよ。どっちを選んでも誰かに悪者扱いされるけど、それでもどちらか選ばないといけないんだよ。


原発を止めようが止めまいが、どちらにせよ放射能が消えてなくなるわけじゃない。地震ばかりのこの国でこの先数千年以上放射能と付き合わって行かなきゃいけない事実は変わらない。
ある日突然平和がなくなったわけじゃない。ずっと危なかったんだよ。一体いつどの瞬間が平和だったの?


*1

*1:一部ちょっと修正しました。私はあまりにも知らなすぎるので、もっとちゃんと知らなきゃいけないと思いました。新聞を読むようになりました。まずはフラットな姿勢で情報に触れるとこから初めたいと思います。偏見や思いこみや自分の意見への固執から間違った情報を発することのないようにしたいです。