わけもなく海を厭える少年と実験室にいるを寂しむ

 昼休みを終えた後の掃除の時間。他に誰もいない理科室で、彼はちりとりを持ってかがみ僕は彼が構えたちりとりにゴミを集めている作業の途中、彼はおもむろに口を開いた。
「海、嫌いなんだよね。」
「なんで?泳げないとか?」
へらへら笑いながら聞くと、彼は静かに首を横に振る。
「水泳は小学校の6年間ずっと習ってたし、プールは普通に好きだ。」
自分の笑顔の温度が下がって行くのを感じる。笑うのをやめて、きっと少し不機嫌そうに僕は問いを重ねた。
「じゃあ、なんで。」
「わからないけど、なんか。」
理科室と空き教室しかないこの階には他に誰もおらずしんと静まり返っていて、僕らの話し声だけが反響する。開け放された窓から吹き込む風がカーテンを膨らませ、汗をかいた額に風がなでるのが心地よい。窓からはグラウンドが見える。グラウンドを出て住宅街を抜けたその先には海がある。
隣の小学校から聞こえる歓声は遠く、どこか隔絶された世界に来てしまったように感じた。















 
わけもなく海を厭える少年と実験室にいるを寂しむ
寺山修司