まっさら

上京した日のこと、もうあんまり覚えてない。
新しい家、山積みの段ボール、帰ろうと思えば飛行機でたった2時間弱だから、の呪文。
上京(当時は埼玉だから上京じゃないか)に夢があったわけではなく、一旗上げてやるぞという野心があったわけでもなく、ただ流れ流れついたという感じだった。
引っ越しは今までに六回。引っ越しは好きだ。分かりやすく転機だし、物語の始まりだし、それまでの自分を知る人が誰もいない気楽さ、誰かの眼を掠めて駆け出すような疾走感。
それまでにもその後にも引っ越しはあったけど、あの本当にまっさらは人生に一回だたぶん。