治療者

今日は健康診断だってこと覚えてたのに、うっかり朝食を食べてしまう、病院に問い合わせの電話したらタイムロスする、気が動転し、化粧すませたのにまだしてないとおもって洗面台で顔を洗ってしまう、玄関まで出てからお風呂の電気が消えてないことに気づく、消して玄関に戻ってから、洗い換えの仕事用のシャツを鞄に入れてから玄関に戻る、出て鍵を閉めて外に出てから、検査表を机の上におきっぱにしていることを思い出して取りに帰る、電車の遅延。乗り換えの駅で、何故か乗りたい路線と逆方向を歩く、引き返して電車に乗ったものの、何故か全く違う駅で途中下車して改札を出てしまう、駅員さんに「間違って出てしまいました」と言いそびれてまた改札をくぐってしまって余計なお金がかかる。


何一つ上手く行かない、上手く出来ない…私ってやっぱり社会不適合なのでは…とおもいながらへこんだ気持ちで病院について検査着に着替えて順繰り検査を受けていくと、血圧測定と採血になり看護士さんに「すみません、今日朝食を取ってしまって…」と申し出た。
「いいんですよォ、食べてしまったことを言ってもらうことが一番大事ですからねえ。いつも朝食は取られてるんですか?」
「はい。」
「ああ、いいことですねー!習慣になってると、なかなか突然違うことするの難しいですよねえ、特に朝はぼーっとしてるし…。」
血圧を計り終え、腕の血管を見ながら
「血管が細いから、朝ごはん食べてなかったら見えづらかったかもねー、朝ごはん食べて正解だったかも、なーんちゃって。」
そう言ってカラカラと笑う看護師さんに、心が緩んでちょっと泣きそうだった。


「出来て当たり前のことがちゃんと出来ないお前が悪い」誰よりも一番私が私を糾弾する。
自分を糾弾する自分と同じ言葉を他人の声で聞いて、また傷ついて、を繰り返しては人に失敗を笑い話として話すことさえ臆病になって一人でがんじがらめにずたずたになっていく私を、そのひとはいとも簡単にほどいていった。