「小学生の息子が、急に『ママ、精通ってね、』って話しはじめてね、」

会社の主婦のひとが唐突に、「昨日、小学生の息子が私のところに来て急に正座して『ママ、精通ってね、』って話しはじめてね、」と話し始めた。
爽やかな朝、事務所に不釣合いな単語に内心ぎょっとしながら「はい。」と頷いた。
「それで内心どぎまぎしながら平静を装って『うん』って頷いたら、説明をしだすんですよ。『精巣で作られた精子尿道を通って出てくることなんだって。』とか、『生理は、子宮の内壁が剥がれ落ちて、月一回身体の外に出されることなんだね』とか。」
「あっ、保健体育かなんかで…?」
「そうそう授業で習ったみたいで。みんな笑いを堪えながら授業を受けてたみたいなんですけど。」
「いやあ、大事なことですよねえ。」
「ね〜。それで『だからママと一緒にプールとかお風呂とか入れない日があるんだね。』とか、『膣から赤ちゃんが出てこれない時にお腹を切って産むんだね。』とかその時初めて分かったみたいで。」
「へえ〜すごい!」
「だから、『これから女の子達がプール休むこともあるかもしれないけど、絶対からかったりしちゃダメだよ』とか、『人によっては生理でお腹が痛くなったり腰が痛くなったり体調が悪くなったりすることもあるんだよ』とか教えて。」
誰かが誰かのことを正しく理解できた瞬間ってなんて希望を感じる一瞬だろう。本当のことを、ただそれがあるままに飲み込める彼の眼差しさえ見えた気がした。
昨日できなかったことが今日できること、昨日わからなかったことを今日理解できたこと。希望が生まれる瞬間が彼から毎日毎瞬溢れてる。
そのきらめきをほんの少し垣間見た私の心にさえ希望が満ちるのだから、彼が生きる子どもの時は本当に素敵なんだろうな、と思ったのだった。