20回目の帰宅。新人と先輩、働くことのエトセトラ。

午前、出かける支度がはやめに終わったのでブログでも書こうかなとおもって編集画面を立ち上げた。

少子高齢化で安月給、なのにサビ残当たり前の現代、誠実に働こうとすればするだけ損だからのらりくらりとかわしていい加減に最小限しか仕事しない、という結論に至るひとがたくさんいて当たり前だ」

という主旨のブログを書いていたんだけど、何も新しいこと面白いこと言えてないな、私がこれを言う意味ないなと思って全部消して家を出た。

 

池袋のお屋敷ことスワロウテイル。20回目の帰宅。

扉を開けると藤堂執事と…初めてお姿を見るフットマン。

今日の担当、「ナミカワ」さん、と紹介された男の子、とっても新人オーラが出ています…。

 

今日はいつも以上におとなしく静かに、彼が定型の動きで全てお給仕できるようにしよう私がもやっとする事態のトリガーを自ら引かないようにしよう…とおもっていたけれど、メンバーズカードの受け取りからメニュー説明、オーダー取り、カトラリーの並べ方、あまりにもぎこちなく所在なさげだったので、

(たぶん『新人だろうがプロとしてお給仕しましょう、自分から新人アピールしないようにしましょう』的な指導は受けてるんだろうけど、もうここまで行くと『新人なんです』と言わせてあげた方が私も彼もこのあとの時間全般楽になれるだろうな…)

と思って

「今日で何回目のお給仕ですか??」

と聞くと、ナミカワさんは一瞬答え方を迷った後

「…はじめてなんです。」

と。

「えっ!!!はじめてなの!!!!わーーーがんばってくださいね!!!」

そうか4月初週の5日間休館してたのって、新人研修期間も兼ねてたってことなんだろうなあ…。

 

大丈夫!?浅葱さん!!とたびたび浅葱さんにおもったことあるけど、いまやこのテーブルの前を通り過ぎて行く浅葱さんがだいぶたのもしく見える…。

 

先輩フットマンの能見さんが彼の指導係のようで、自分の担当卓並みに私のテーブルも気にしてくれて、

「ナミカワどんなかんじですか?何かあったら言ってくださいね!」

とたびたびフォローしに来てくれた。ベル鳴らすと能見さんがまずすっ飛んできてくれた。

初日の彼も慣れない仕事で大変なのはもちろんだけど、違うベクトルで同じぐらい先輩たちも大変だ!自分の仕事しながら新人卓も気にして新人の挙動にも気を配らないといけない…。

そして当然お嬢様側も負担負うことになるし。わたしはお屋敷のメニューは飲食代にサービス料込みの価格設定だと勝手におもってるけど、先輩たちとはとても同クオリティとは言えないお給仕に対して、でも払う金額は同じだから。

だから私はなんかここでどう振る舞うかちょっと迷ったんだけど、極力感じ悪くならない程度に普通にやり取りして、失敗があってもあんまり一緒になってそわそわしないで、何か足りないものがあれば率直に「あれがまだないです」と言い、1人席なのに鞄を取ってくれようとしたら「(自分で取るから)大丈夫です」とそれとなくお屋敷の慣例を伝え…みたいな。

メイドカフェとか女の子が働いているコンカフェだったら不慣れな子にはもうちょっと無責任に優しくしちゃうけど、でもやっぱお屋敷は色んな意味で仕事ができない人には厳しい職場だから、初日から私が無責任に優しくして『あ、これぐらいでも別に大丈夫なんだ』ってここでちょっとでも思われてしまったら逆に後がつらいよな~実際正直まだ全然単独で担当フットマンやれるレベルに達してないんだからとか、とはいえまあこれだけ業務量あって初回から上手くこなせるわけないよな~~とか色んなことを考えて自分のテンション設定をした。

完全に結構ロープレの練習相手してる気持ちだった!!

もし私が今日が初めてのお嬢様だったら、今日のこの80分を受けてまたお屋敷に来ようと思えたかなー?とか考えると、あの未熟児具合でほんとに担当やって大丈夫?と思わないでもない…。人手不足とか何かやむを得ない事情があったにしても。

 

大河内さんがお化粧室帰りはエスコートしてくだすった。私より少し先に赤い絨毯で待っていたお嬢様をナミカワさんが案内して、そのすぐあとに大河内さんが来てくれてエスコートしてくださったんだけど、ナミカワさんが先のお嬢様をエスコートしつつ、けど自分の担当だから自分が何かしなきゃいけないんじゃないかと大河内さんと私の方を見てそわそわしていて、そのナミカワさんを見て大河内さんが怒るでもなくただ冷静に落ち着いた様子でそっとナミカワさんの身体をお嬢様の方に向けなおして今ナミカワさんがするべき仕事をするよう促した。

席についてから、こないだブルームーンに行きましたとか何飲んだとか、また行きますとかお話しした。今日の大河内さんと藤堂執事の安心感と包容力よ~~~。

 

そしておつりのやり取りやら2ポット目のお茶をギリギリ飲みきってどたばたおでかけ。藤堂さんに

「何召し上がったの?」

と。

「ボロネーゼ食べましたー」

「美味しかったでしょ?」

「美味しかったです!!」

「お屋敷のボロネーゼ美味しいからね~。わたしもパスタが好きで、2日に1回は食べるの。」

 藤堂執事は還暦をとうに過ぎたおじいちゃんだけど、いつも新鮮な在りようだしぴちぴちのフットマンたちを差し置いてとびきりキュート!!私も藤堂さんみたいな年齢の重ね方をしたい。

 

「行ってらっしゃいませ」

を八幡さんが笑顔で言ってくれてうれしかった。初めて担当してもらった時はほんとに八幡さん1回も笑ってなかった。私の顔を覚えてくれたから微笑んでくれるのか、わたしが「あ!八幡さんだ!」と思ってるのが表情に出てそれに呼応してくれてるのかどっちかわからないけど、いずれにせよ笑ってくれるようになってうれしい!

 

能見さんも八幡さんの隣で行ってらっしゃいませ言ってくれてて、80分間フォローありがとうございますおつかれさまですの意を込めて会釈。

 

この日頼んだメニュー

◎カトリーヌ(サラダ・ボロネーズパスタ・黒ごまシュークリーム)

ボロネーズはなんかお酒の味が出してるコクっぽい味がしておいしかった。

日替わりはケーキとジュレの味聞いてピンと来なかったらシュークリームにするのが私の中で安パイになりつつある。お屋敷のシュークリームおいしい~。

 

◎紅茶…チャールズ

ダージリンベルガモットのお屋敷独自ブレンドのアールグレイ。なんか安いアールグレイって秘儀ベルガモットッッッ!!!!!って味だけど、チャールズは上品なベルガモットだった。

 

◎追加の紅茶…ジョージ2世

アールグレイっぽい風味なんだけどもうちょいまろやかで飲みやすい紅茶だった。二杯目にしてよかった。できればもっとゆっくり飲みたかったなー。

 

なんか今日紅茶が美味しい気がする…と思っていて、隣の卓の会話を漏れ聞いたところ香川さんが紅茶担当だったそうだ。

今日の紅茶いつもより美味しい気がする…と思った日の担当毎回香川さんだなあ。同じ葉っぱと同じ水を使っているはずなのに、入れる人によって印象が違うの、お茶の世界って奥深い…。

 

 

帰ってから夜、カレーつくりながらぼんやり考えてて、

『音楽聴いても絵を見てもマンガ読んでも小説読んでも「会社員じゃないお前に何がわかる」とどこかでおもってしまう人達に届く仕事や表現が、コンセプトカフェにはあるんだろうな』

とふとおもった。

今日見たナミカワさんと先輩フットマンたちの新人と先輩にまつわるエトセトラってどこの職場でもたぶんある。

普段自分が働いているときは自分のことで必死だから主観でしか見れないことが、別のひとが働く職場では客観で見える。

仕事、働くことのいいことって、それがまともな仕事なら、何かしら働いてるだけでそれが必ず他の誰かのためになるってことだとおもう。飲食店だったら、まず単純にお客様のおなかを満たせるとか、洋服屋さんだったら、お客様のファッションの幅を広げられるとか。

仕事のクオリティが上がれば、もっと誰かのためになれる。

音痴でも運動神経悪くても絵が描けなくても上手なダンスが踊れなくても、何の芸術的才を持っていない人間でも、必ず誰かのために何かができる。場合によってはそれ以上に、仕事それ自体や仕事に向かう姿が誰かを救えることだってある。それはお客さんかもしれないし同僚かもしれない先輩か後輩か友人か家族か、誰か。

何の才もない人間も、真摯に働けば芸術と同等の、あるいはそれ以上の何かを成し得るんだって信じたい人間がコンセプトカフェに通うんだ、少なくとも私がもう5年も通い続けている理由の一端はそれだよって、気付いた。