ETV特集「加藤一二三という男、ありけり。」を見てしまったらもうひふみんなんて呼べない

加藤一二三という男、ありけり。

をたまたまつけたNHKで見た。再放送だったようだ。

ひふみんこと、加藤一二三九さんのドキュメンタリー。

ずっと名前と姿といくつかの逸話を知るのみだったけれど、その伝え聞く話にはなかった勝負師としての凄まじさを知った。

一番衝撃を受けた言葉が、5年、10年と行き詰まりを感じていた頃、「これを打開するためには宗教の力を得るしかない」

と教会で祈りを捧げるようになり、後にキリスト教徒として洗礼を受けるという話。

牧師さんが、「加藤先生は誰よりも長く祈りを捧げます」と。

ご本人は、「しつこくしつこく祈り続けていれば、神様といえども必ずその内根負けする」

これはもう、なんというか行き詰まりに完全な諦めでもあるし、一方で自分の持っているものを心から信じていないと行えないことでもあり、その闘いに対する執念に戦慄した。

牧師さんがそういう加藤さんの好むたとえ話を解説する。

知人の家にパンをもらいに行く、ノックしてもノックしても断られ続ける、また明日と言われる。それでも戸をたたき続けると、根負けしてパンを差し出された

と。

(なぜ宗教勧誘の人は相手の感情を一切かんがみず知らない会社や人の家の戸を叩いては邪険に断られるということを何度繰り返してもあんな怖いほど澄んだ目で訪問を繰り返せるのか、その理由というか思想の一端もここに見た気がした)

 

 

歴代最多の、2500局を超える対局数、通算最多敗戦 1180敗、歴代一位の棋士現役57年。

このドキュメンタリーのディレクターはHPで

私たちが見続けた加藤さんの戦いの日々は、孫よりも年下の棋士たちに負け続ける日々です。負け続けているのに、もう77歳なのに、既に栄光をつかんでいるのに、なぜ、戦うことにこだわりつづけるのか…。

とコメントしている。

www.nhk.or.jp

神様や自分の棋士道を心から信じていないとこの記録は残せない。これだけ負け続けても揺らがないのは、信仰の力の強さだと思った。

 

あとしびれたのは、加藤さんの将棋のスタンスを解説する人たちの言葉

あそこまで同じ戦法を貫かれると不気味ですらある。普通、研究され対策されることを考えると、一つの戦法をとり続けることは、一つの生き方ではあれ現実に実行する人はほとんど居ない。しかし加藤先生に限っては、全くそれを恐れていないようだ

という羽生さんの言葉や、生き様や闘志が伝わってくるスタイル。

加齢し、引退が確定しても何も衰えない、揺らがない、迷わない

 

こういう生き方があるんだということ、そしてそれを表現することができる将棋、そして人が生きることの奥深さをまたひとつ知った。あの生き様、どう生きるかということがもう表現で芸術だ、神様に向かって表現する行為だと思った。