新世代インターネットノスタルジック

「本当にこれでよかったのかな。」
もう何年も、僕以外の誰もログインしていないだろうスカイプのグループチャットに書き込んだ。

ゲームやギルド自体に対する飽き、就職、進学、彼女ができたetc

みんながだんだんオンゲにもスカイプにもログインしなくなった。

 

ゲーム漬けで、ゲームで知り合ったコテハンスカイプのIDしか知らない人達と、スカイプを繋ぎながら一緒にゲームしたり、たまにハンゲでお絵かきの森をした。

ニコニコのプレアカ持ってるやつがたまにニコ生やってるのに集まって、チャットするみたいにコメントをつけたりしていた。

毎日楽しかった。顔も名前もわからないのもいいことに、悪意のある奴ともたくさんすれ違ったし粘着されたこともあった。ささいな言葉の積み重ねで心底嫌いになった奴も何人かいる。

それでも「楽しかったんだろうな」と他人事みたいに思ってしまうのは、あの頃に帰れるなら帰りたいと、どうしてもどこかでいつもほんの少しだけ、願ってしまっている自分がいるから。小学生時代にも中学時代にも高校時代にも帰りたくないのに。あの頃だけ、あの頃にだけは。誰も僕を脅かさないひとりきりの部屋で、好きな世界で好きなゲームして、あの楽しいプレイヤーたちとたくさんの言葉を交わした。

上手く寝れない夜は、夜中途絶えないスカイプのグループ通話で、みんなの話し声をBGMにして眠った夜もあった。

 

ゲームへの飽きもあって、ギルドの人の入れ替わりでなんとなくしっくりこなくなって、それと同時に大学時代ずっとこんな生活のまま終えていいのかという焦燥感もあって、サークルに入ったりバイトを始めたりした。

だんだん忙しくなって、だんだんギルドやゲームのことを思い出さなくなって、でもたまにログインするとログインする毎に「あいつも最近ログインしなくなったみたいだよ」という話を聞いた。

ログインする頻度も段々少なくなって

気付いたら就活で、就職で、働きはじめたらよくあんなにゲームする時間あったなと思って、

気付いたら、三十代になっていた。

 

戻れるなら戻りたいけど、戻ってどうする。

もっともっとあそこで遊んでいたかった。でもあそこから抜け出して試行錯誤したからこそそれなりに幸せに生きている今日がある。

ずっとあそこに居続ければ、きっと社会から居場所を失いやがて生活の仕方もわからなくなってしまっていただろう。

みんなそれぞれのタイミングでそれに気づいたからきっとあそこから誰もいなくなったんだと思う。それとも単にあそこに飽きただけか、もう聞くこともできないけど。

友達とはいえない、でも何も知らない他人から「そんな薄情な関係は友達でもなんでもない」と言われたら怒りたくなるような関係は何だ。

 

例えば、今更お互いの本名を知って会ったりしてみてももうきっと何かが違うんだろう。

あの頃はあの頃にしかない。

 

子どもの頃、大人のノスタルジックをあんなに嘲っていたのに、この気持ちはなんなんだろう。

新しい楽しいをどんなに作っても、あの頃には決してもう戻れないのだという事実を思うと胸が痛い。

 

酒を飲んで忘れたふりをする。

明日の朝、スーツに着替えて満員電車に乗り込む頃には本当に忘れている。

新しい楽しいを日々作ろうとしていくしかないので。それでも割り切れない日はたくさんあるけど。

 

右クリックして、グループチャットにさっき送ったメッセージを消した。

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