「なんだ別に、私だって可愛いを身に付けて楽しんだっていいんじゃん。」

30歳になった記念に、ロリータ体験サロンへ行った。

10代の頃はKERAをたまに買って読んでいたけれど、ロリータ服なんて私の出身県のどこにも売っていなかったし、街中で着ている人なんか見たことがなかったから、ロリータ服とは鑑賞するものなのだと思っていた。仮に身近に売っていたとしても着ている人がいたとしても、そもそも私のお小遣いでは買えそうもない値段だった。

 

あの頃と違って日常のだいたいのものにそんなに我慢をしなくてよくなった、30歳の私の目に入ったのが、ロリータ体験サロンの広告だった。

 

普段のメイクと印象が違う甘い、でもしっかりしたヘアメイクを施され、 BABY,THE STARS SHINE BRIGHTの赤いジャンスカにふりふりの白いブラウス、ニーソを身にまとった私の姿を鏡で見て…、微妙だった。いや、ブスだった。普段の方がマシだったと思った。もちろん別にここのヘアメイクさんの腕が悪いわけではなく、素材としての私の問題だ。

写真撮られるのもなんだか嫌だったけれど、どこかで写真の私なら…とスケベ心にも似た期待を持って撮られてみたけれど、撮った写真を見せてもらうとやっぱりぎこちなくて、ブスだった。

 

全然似合っていなかったのに、私服に着替える頃にはもうなんでかすがすがしくて、どこへでも行けてしまいそうな気持ちになった。

なんだ別に、私だって可愛いを身に付けて楽しんだっていいんじゃん。別に全然、いけないことじゃないんじゃん。

私服に着替えて全身鏡を見る。こっちの方がしっくり来る。顔と髪がちゃんとしているせいか、いつもよりまともなひとに見える。

 

お店を出てさてどうしようかと思った時、急に思い立った私は駅に向かい、電車に飛び乗った。目的の駅で降りると、グーグルマップと周りの景色を見比べながら、目的のホテルを探し当てて、中へ入る。

最上階のラウンジで、アフタヌーンティー。

私ごときがホテルのアフタヌーンティーに行きたいなんて言っちゃいけない気がして、今までたまにネットで調べても結局誰のことも誘えずじまいだった。

予約していなかったけれど、運よく中に入れた。

一人でアフタヌーンティーなんてと思っていたけれど、この日の私はなんだか堂々とした顔をするのが上手にできて、なんの後ろめたさもなく、優雅に一人でお茶をした。

お菓子もお茶も美味しかった。

さっき、あんなにも可愛いひとにはなれなかったのに、今日私は昨日までよりも自分のことを好きになった。

そしてここにひとりで入れる勇気をやっと手に入れたのが、30歳の今日、だった。