空白バカボン「エビル・蝿・ノイズ」・感想。

見に行って来ました。
そういえば空白バカボンは旗揚げ公演・芸祭公演・今回と、旗揚げから全部見れています。

場所がサブテレニアンってことで、私はなんだかあそこと相性が悪いみたいで見に行く前からなんとなく憂鬱で、入ってからも落ちつかなくて開演してからもなかなか集中できなかったんですが、話しが進むに連れてに連れて段々集中できたので良かったです。

本編の感想です。


面白かったです。
この公演の稽古場を一回見学に行ったことがあって、その時も面白かったのですがそれよりずっと良くなってました。
ひとつひとつの間とか。
バカボンはなんか皆演じてるというか、素のみんなにシチュエーションだけ与えてるって感じで演技がすごい自然だからそこが良いなあと思います。
自分と違う人間を演じるというよりは、演者それぞれの個性を最大限生かしてデフォルメしてる感じがする。だからバカボンに出てる人たちってみんな面白いなあと思う。
例えば、「ありまを演じて」って言われたら、なんだかんだ世界中で私が一番私を演じるのは上手いと思うんです。超有名でめっちゃ演技上手い俳優さんよりも、私自身を演じるのはどう考えたって私の方がうまい。容姿だって私以上に私に似せられる人なんて居ない。
そういう、「この人のこういう面をこう引き出してこんな風に見せたら面白いんじゃない?」っていうことがとても上手いんだと思います。

だからそれはある意味限りなくノンフィクションのドキュメンタリー造りに近いことをこのフィクションの物語でやってるんじゃないかって気がします。
事実のどこをどう切り取ってどう見せるか、みたいな。良いノンフィクション映画を作る監督はそれが上手いってことなので、それが上手いバカボンは良い演出なんだろうなと思います。

こないだAKBのドキュメンタリーを見た時に痛烈に思ったのは、「素の人間の素の反応に演技は絶対に敵わない」ってことだったので、バカボンは敢えてその事実を利用して演技させてる感じがするのでそこも面白いなあと思います。
芸祭公演の「出演者1名に芸祭のステージで『尾崎豊についての討論会をやるよ』って言っといて当日本番の舞台上で他のメンバーで突然コントをはじめるドッキリ」とかも面白かったし。

演技に才能とか能力を持ちだす人達に「本人を演じるのが一番上手いのは本人に決まってんだろ!」って短的な事実を突き付けることが出来ててすごい痛快。


そして、やっぱバカボン見ると「男の子って良いなあ」っていう羨望や嫉妬心や憧れが募ります。男の子のあの馬鹿でくだらなくてエロくてしょーもない面白さっていうのは女性は逆立ちしたって絶対持てないものなので、良いなあ、と思います。

前回は出演者全員が男の子でしたが、今回は女の子も出演していたので、劇中の女の子の役割にも注目してました。
八木さんは、「一つの単語を拾ってオチのない話しをまくしたて、本人的な笑いどころは自分で笑い、でも気がつけば場の空気をかっさらってる。突っ込むに突っ込めない空気を作ってるのでとりあえず周りは彼女に合わせざるを得ない。」
みたいな、女の人のつまんないとこをぎゅっと凝縮してデフォルメしたシーンがすごい面白かったです。
「女の人ってこういうとこがつまんないよね!」っていうのをデフォルメして見せるとこが、女性が面白くなれる数少ない可能性だと思うので、そこを生かしてる感じがしました。
そして男女問わずみんな生きてて必ず女の人でつまらない思いをさせられてることはあるので、誰しもに共有されうる笑いだと思うし。
テレビで見る面白い女芸人さんもやっぱそういうタイプのお笑いの人が印象的だし。友近だったり柳原加奈子だったり。

カルナさんは、こういうメンツの中で一番普通の目線を持ってる感じがするから、その面白さかなあ、と。おかしなことしてる男の子に普通の反応を返す面白さみたいなものを感じました。特に渡部とのシーンで。
あと彼女はすごい美人さんで、彼女一人居るだけでものすごい舞台が華やかになってました。

内田くんは、なんかこう狂気のある面白さ。真面目すぎて怖くて面白い、みたいな。私の見た回は終盤彼の一挙手一投足に笑いが起こってました。

渡部はうざ面白い。普段普通に喋るとただのうざいですが、舞台というフィルターを通すと丁度良いです。「舞台というフィルターを通すと丁度良い」は内田くんにも感じます。

塩田さんは、シュール。ひたすらにシュール。どこがどうと名状しがたいけどシュールな面白さ。でも終盤ゾンビと戦って去るとことかすごく格好良かったし、あとちょっと異常なまでの姉(八木さん)への執着心とかもあって、このお芝居の「笑い」という点以外の面白さは彼が担ってるような気がしました。
やっぱり面白さが笑いだけだと、私は「じゃあお笑い見に行った方がいいじゃん。お笑いの人の方が本職なわけだし。」って思うから、このお芝居の私が一番良かったなと思うところは、笑いに終始しなかったってところです。
塩田さんと八木さんの関係性とか、八木さんがゾンビになってしまってそれでもすがりつく姿とか、でも最終的にはゾンビになってしまった彼らをまとめて倒して、その後靴を脱いで、揃えて並べて静かに出て行く表現とかはすごく良いなあと思った。
それが笑いの中に少しだけある意味とかバランスとかがとても良いと思った。

でもずーっと笑いがあって、散々笑わせといて最後に少し寂しさを残して終わるっていうのはよく考えたらずるい構成ね!でも良かった。


それから音響照明もよかったなー。特に塩田VSゾンビの音響照明とかすごく格好良かったし、最後の、靴を揃えて並べて塩田が退場した後、揃えて並べられた靴にピンライトを当てた後暗転する演出とかすごく格好良くて、「やりやがった!」って感じがした。
ちなみに今回の音響照明もお布団コンビです。


気になった点は、ここが面白さと表裏一体だから難しいけど、会話がなんだかだらだらだらっと流れてしまってるように感じてしまったとこが何箇所かあったところなんだけど、でもこれは私が座った席の問題もあるかもしれない…。
あと、ラストのゾンビとの対決が少し単調に感じてしまったから、も少し構成を考えるかそれか戦い自体を短くしても良いのかなーと思った。
でもここは好きなシーンでもあって、音響照明の格好よさは先に述べた通りだし、照明の効果もあいまって4人の合体ゾンビがすごいそれらしく見えて良いなあと思いました。
CGとか編集じゃなくて、役者の身体性を最大限に生かしてるところが演劇の好きな所です。
あと、最後去って行く塩田さんのこめかみに汗が浮かんでるとことかもすごい格好良かったし。

あと、良いなーと思ったのは、みんな「男の子」「女の子」なんだよね。「男性」「女性」じゃない。
そこも良いなと思った。


今回の作・演出の松尾さんのツイッターのプロフィールには「劇作と演技と演出の間」と書かれているのですが、まさにそういう彼の性質を生かした舞台だなあと思いました。役者その人個人の特質を最大限生かしてるし、でも野放しにするんじゃなくてちゃんと間の取り方とか見せ方を演出として制御して面白さや笑いに繋げてるし、ラストの締めくくり方や話の構成とかの劇作の分野もきちんと作れているなあと思ったし。
やりたいことに対して自分の性質や強みをしっかり磨いて行ってる感じがしました。

それから、こういう出演者一人一人の面白さを引きだす演出って、
「自分が一番面白い!自分は選ばれた特別な人間!お前ら付いて来いよ!」と思ってるような人には絶対付けられない演出だと思うので、そこもとても好感が持てました。
きちんと人間の多様性を理解した上でその人一人一人の固有性やその面白さに眼を向けている感じがして。


劇団名・空白バカボン(http://kuhakubakabon.web.fc2.com/)
タイトル・「エビル・蝿・ノイズ」
会期・3月9日-3月11日
チケット価格・1200円(前日/当日)
会場・サブテレニアン

□キャスト
渡部隆
内田悠介
松尾祐樹
八木佐和子
カルナ(ゲスト)
塩田将也(ゲスト)

■スタッフ
演出 松尾祐樹
照明 格清雄介(お布団)
音響 櫻内憧海(お布団)
美術 高山紗希
舞台監督 出川恭平
制作 小川愛姫(お布団)/岡林愛